2017年観劇31本目:Assassins

7月15日(土) 2pm
New York City Center
Encores! Assassins
Orch BB 106番

出演者が決まっていない時点でチケットを買っていたのですが、
いい俳優たちが揃ってラッキーなEncores!でした。
特にSteven Boyerをミュージカル(コンサート版ですが)で
見られてよかったです。

ソンドハイムの作品をそう多く見ているわけではないので、
この作品も未見だったのですが、簡単な内容は知っていたものの、
アメリカの歴史が絡んでくるので、事前に大統領の名前は頭に入れておきました。

舞台には射撃場の的がセットされていました。
そこに大小様々な拳銃がぶら下がっていました。
Everybody’s Got the Rightのメロディーが始まると、
あら、なんだかとっても耳障りがいい。
拳銃を持っているのに、そして皆思いつめた顔をしているのに、
ラインダンスをしたくなるようなメロディーです。

この作品、暗殺者たちの気持ちをことごとく弄ぶというか、
彼らは彼らで使命感や、顕示欲や、
認められたいと言った願望があったんだろうけど、
結局そんなものは、簡単に音楽(歌詞、テンポや曲調)によって打ち消されてし
まう、
というユニークな作りになっていました。
特に、ギトーが歌う歌詞をBalladdeerが歌うと
皮肉って、否定しているところがじわじわきました。

そして個々のシーンが深く計算されているだけでなく、
全体でのオチというか、結末の持っていきかたが鳥肌ものでした。

最後、Lee Harvey Oswaldが
ケネディを暗殺したあと、他の暗殺者たちが
やっとこれで自分たちの価値にスポットがあたると言わんばかりに
揚々とAct1の最初と同じ曲を歌うのに、
銃を持った子どもが今にも誤射しそうな様子で出てくると、
客席の注目が一気にそっちに集まり、
発砲すると、あー、もう誰も暗殺者に興味なんてもっちゃいない。
子どもは誰も殺してなんかいないのに、注目の的は子供。
結局暗殺者への注目なんてそんなもん、と言わんばかりでした。

最後の最後まで、暗殺者たちへの皮肉が半端ない。
でもだからと言って説教臭さもないし、エンタメとして成立している。
大統領暗殺者という題材を選んだその着眼点とか、
全体の構成とか、なんかもう想像の範囲を超えているというか。
だいぶ衝撃を受けました。

ストーリードリブンではなくて、
構成ドリブン、なんて言葉があるのかどうかはわかりませんが、
実際の出来事をこうやって料理して、時系列で追うのではなく、
暗殺者たちを一堂に集めるというアイディアから始まって、
メロディーだけで観客の気持ちをがらっとかえたり、
コミカルに歌っているようで、歌詞がすっごい皮肉だったり、
幾重にも構成に構成が絡み合っていて、一度では全ての面白さを掴みきれず、
あのシーンにはどんな伏線があったんだ?などと、
見終わってから、疑問が湧いてきて迷宮入りしまして。
他の作品は、パフォが良くってもう一度見たいと思うけど、
今回はあちこちに散りばめられた「おもしろさ」を全部拾えなかった、
という印象で、だからどうしてももう一度見たい!と思いました。

さて。俳優ですが、これまたうまい人がここまでよく集まりましたね。
Shuler Hansleyは歪んだ愛を表現させたら右に出るものはいないのでは、
というぐらい今回も純粋だけど歪んでる感じが最高に出ていました。
あとはVictoria Clarkが相変わらずうまかった。
確か彼女は誰かのリプレイスで入ったはずだけど、
この人のコメディーセンスもたまりません。
Byke役のDanny Wolohanの思いの丈をレコーディングする様子も
狂気に満ち溢れていたし、
Steven Boyerも、H2Gのように繊細で今にも潰れそうな感じが出ていたし、
一人一人どこがよかったか挙げたいぐらい、どこも見応えがありました。

それにしても、やっぱりここに戻ってくるけど、
こういう作品を作る人がいる世界は、やっぱりすごい。


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2 thoughts on “2017年観劇31本目:Assassins

  1. 今、NYでやっているんですね‼好きな演目なので英語バージョンも観てみたいです。

  2. >Yamさん
    NY City CenterのEncores!シリーズなので、4日か5日程度の期間限定公演でした。とても興味深かったです。

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