04/24/2024
Suffs
Music Box Theatre
Orch C6 $44 Lottery
4月末に新作のオープニングラッシュがあったので、
これからトニー賞前に気になる作品を見ていきたいと思っています。
その1つ目がSuffs。
2022年のオフ公演がオンに上がってきました。
アメリカの女性参政権のために戦ったSuffragistを描いた作品です。
日本で女性参政権が認められたのは1946年ですが、
アメリカもそう歴史があるわけではなく、
憲法で認められたのが1920年にAmendment19条が最初。
参政権運動自体は1840年代から始まっていたものの、
州ごとに賛同を得ることに注力しており、
成果がなかったわけではありませんが、
70年経っても、進展ははほとんどありませんでした。
Suffsは女性参政権運動がぐっと動く数年を描いています。
舞台はそのあまり動いていなかった頃の、でも重要な運動を率いていた
National American Woman Suffrage Association (NAWSA)のリーダー、
Carrie Chapman Cattがスピーチを行っているシーンから始まります。
その内容が”Let Mother Vote”でソフトなアピール。
スピーチの内容や仕草を通じて、
運動の立ち位置や、当時の女性の位置付けが見えてきます。
オープニング曲で舞台の設定がしっかり見えてくる曲は大好き。いいスタートです。
それを見ているのが、Alice Paul。
まだ大学を出たばかりで野心に燃えている彼女は
今のままでは前に進んでいかないと、新しい運動を率いていきます。
その仲間集めをする歌が次の曲なのですが、
これは説明的というか、長すぎて、
もうちょっとカットできたんじゃないか？とかセリフでよかったんじゃないか？と思ってしまいました。
1曲目でぐっと掴まれたのにこの流れがちょっともったいなかったです。
全体的にすごく印象に残る曲と、うん？これはどうした？みたいな曲の差を感じました。
演出も同じで、急にどうした？レベルのものが出てきてしまい、
もうちょっと何とかできたんじゃないかなぁと思うシーンがちょいちょい出てきます。
でも先に全体の感想を述べてしまうと、欠点のある作品ではあるものの、
この内容を伝えたいんだという強い意志を感じたし、その意志が演技にも伝わって、
登場人物が持っていたであろう熱意もすごく伝わってくる作品でした。
そしてAliceが集めた仲間が皆、ライカブル。全員この作品でBroadwayデビューだそうです。
（オフには出ていたPhillipa Sooが、オンに出なかった理由はわかりませんが、
でもこれはフレッシュな5人を使う意味があったと思うので、良い選択だったと思います）
そしてこの5人の周りを固めるベテラン陣、Jenn Colellaや
Nikki M. James、Emily Skinnerが上手くて、どっしりと構えていて、いいチーム構成でした。
しかもこの作品、Aliceを演じているShaina Taubが
脚本、作詞作曲なんですよね。才能豊かですごい！
彼女の思いや、キャストの思いに心動かされ、
全く想定していませんでしたが、2回ぐらい泣いたんですよね。
思わずぐっときてしまって。
1回目はShow them who you areかな。
2回目はLucy’s song。
まさかこの作品で泣くと思ってなかったよ。
そしてもう一点、特筆すべきは、
Repriseの使い方がとても上手だったこと。
耳の残るラインを使っているので、容易に同じ歌詞だな、と気づくのですが、
同じ歌詞のはずが、1度目と2度目では意味が違って聞こえます。
こう練られたRepriseが3回ぐらい出てきたんですよね。
なんかもう、「こうきたかー」と膝をポンと打ちたくなるほどでした。
少し説明的になりすぎるところもありましたが、
歴史の教科書を見ている感じではなかったし、
登場人物を全く知らなくても、しっかりストーリーが追えるし、
（一人だけ名前が曲名になっていたので、
Playbillを見てすぐに名前を調べましたが、必要なかったです）
パワーがあって、いい気持ちで劇場を出られる作品でした。
比べるのも失礼だけど、女性版1776とはレベルが違いました。
あと衣装も近くで見たからきれいなのがよくわかりました。
総じて100点ではないけど、見てよかったな、と思ったし、
見終わった後は気になった人物を調べるなどして、
歴史の勉強にもなったし、なかなかいい観劇でした。
