2016年観劇9本目:Boy

3月29日(火) 7pm
Boy
Theatre Row
E5 $25(Student Rush)

オフで上演中のプレイを見に行ってきました。
赤ん坊のときに受けた割礼が失敗し、
性器に大きな損傷を受けてしまった男の子が、
ドクターのsex identityは
natureではなくnurtureで決まるという理論に基づき、
男の子ではなく女の子として育てられる、という話。
でも…。



実際の出来事(本人が本を出版している)が元になっています。
見に行ったのはこの作品のメインビジュアルがなんだか印象的で、
調べてみたら気になったのですよね。

Bobby Steggertが見たかったのも大きな理由の一つです。

ストーリーはFun Homeと同じように
今と過去を行ったり来たりしながら進みますが、
Samuelとして生まれ、
ドクターの助言のもとSamanthaになった過去も、
Adamとして生きている今も全部Bobby一人で演じます。
プロジェクションで今は何年、と映し出すだけで
外見の変化は一切なし。
衣装チェンジはなし。カツラもかぶりません。
だからと言って演技に大きな違いを持たせるわけでもありません。
子どもっぽいわざとくさい動きはないのに、
何か自分に違和感を覚え、周りに馴染めないでいるSamanthaと、
「男」として一人前であると証明するのに焦るAdamの葛藤や苛立ちが
ストレートに伝わって来る舞台でした。

セットはちょっと明らさまかな、とも思ったけど、
カウチ、テーブル、ランプが置いてあって、
それが上下左右逆さまになって天井にも吊るしてありました。

Samanthaはときどきカンセリングで
「男の子」が好むようなことを口に出したりするんだけど、
どこかでそれを出すのはいけないと感じ、
両親やドクターの期待に応えて「いい子」でいようとします。
(自分が実は男の子で女の子として育てられているのは知らない)

両親は将来この子が困らないようにと
ドクターに助けを求め女の子として育てることを決心し、
ドクターの元にコンサルティングに通い、
選んだ道は大変な道だけど、Samanthaをサポートすることを誓います。

ドクターは自分の理論を実証するためのいい事例として
Samanthaを利用するんだけど、
でもセリフや表情に出てくるSamanthaを助けたいという気持ち、
父親的な愛情は嘘じゃなかったと思う。

みんながみんな、誰かのために動いたことが
結局誰も望まなかった道を進んでしまうという、
とっても皮肉な話でした。(でもこういうことってあるよね…)

結局自分はSamanthaではなく男であると気づいたSamuelが
Adamと名前を変え、ハロウィンパーティーで
同級生のJennyと出会うところから始まります。
実はSamantha/Samuelが子どもの時に好きだったのがJenny。
でも当時は女の子なので、Jennyは同じ学校に通っていたという
話をしても誰だか思い出せません。
シングルマザーのJennyとAdamは関係をスタートさせるものの、
数回デートを重ねたあとでも体の関係が持てない上に、
急にAdamが両親にJennyと結婚するつもりだと告げたかと思えば、
母親が熱烈に反対するので、状況についていけず、
JennyはAdamのところを去ってしまいます。

ここが作品のターニングポイントになります。
父親がAdamに助言をすることで
AdamがJennyとの関係を修復する、すべてを打ち明けることを
決心するシーンと、
Adamとして生きはじめたSamantha/Samuelが
ドクターと出会い、あの実験は失敗だったと
認めてほしいと迫るシーンがリンクします。
ドクターはSamanthaばっかり見ていて、僕を見ていなかった、
というセリフのあとに、Adamって呼んでくれと頼み、
ドクターがAdamと呼ぶと、
thank youと言ってドクターの手を握るのですが、
敵意とか憎しみが最後に残らない別れ方でよかったです。

そしてまたJennyとのシーンに戻り、
過去の出来事を話して(上記のドクターとのシーンを説明していた設定)、
二人が元どおりになるのですが、
話としてちょっと最後は駆け足すぎる部分があったり、
父親の励ましだけで解決するんかい!! というところはあったけど、
何がすごかったってBobbyの演技でした。

どの批評を読んでもBobbyを大絶賛だったけど、
静かな情熱というんですかね。
感情を爆発させるような演技ではないのに、入り込んでしまう。
ストーリーそのものの視点は新しいけど、
結末は見えていた中で、暗転の時間が惜しいぐらい
早く次を見せてくれーと思ったのはBobbyのおかげだと思います。

Samanthaが周りに馴染めなくて不安を吐露するところや、
最後ドクターにただ自分を見て欲しかっただけだと伝える
彼の佇まいとか、表情とか、間が、繊細で、
かつ精神の均衡と崩壊のほんのわずかな合間を保っている様子が、
とっても緊張感がありました。
まぁそして良く泣くのですよ。どんなけ女優なんですかw
Big Fishでもこの人にまぁ泣かされたけど、
今回もだいぶぐぐっと来ました。

この作品を見る前に、どこかのインタビューで
チャレンジングな役を選ぶようにしていると言っていたけど、
次も何かBobbyの作品を見たいと思いました。
作品は4/9まで。


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