2016年観劇8本目:Fiddler on the Roof

3月18日(金)
Fiddler on the Roof
Broadway Theatre
$37 (Rush) J22 with Aさん

この2015-2016シーズンもので、
SLMと並んで楽しみにしていたのがこの作品でした。
特にこの作品のファンというわけではないんだけど、
Danny BursteinさんのTevyeがとても気になっていました。
一度2009年か2010年のUSツアー版でこの作品を見たことがあるんだけど、
その時のTevyeはHarvey Fiersteinさんがやっていたので、
もっとこの役は年齢が上の人がやるイメージがあり、
DannyさんがどんなTevyeになるのかとても興味がありました。
DannyさんはSouth PacificとCabaret(2014年の再演)で見ています。
Folliesも彼目当てで行ったけど、お休みだったんですよね…。

この日はアンダーが多く、紙が4,5枚挟まっていました。
大きいところだとGoldeがお休み。
Jews側の村人で、男の人だと思われる役に
二人ほど女性が入っていたけど、あれは普段からそうなのかな、
それとも玉突きでそうなったのかな。
でも最後に四女五女の結婚相手として紹介されるboysの役でもあったから、
あの役は女性がやることになってたとしてもわかるけど。

SFで見たツアー版は親父が駄々こねてるようにしか見えず、
これは迫害されたユダヤ人の悲劇と不屈の精神を語りつつも、
traditionを大切にしつつも時代の変化に対応していく話、
というのが頭ではわかっていても、
イマイチ舞台からは伝わってこなかったのですよね。
なのであまりこの作品にいいイメージがなかったのですが、
数ヶ月前にお師匠様から、今回の演出のポイントを教えて頂き、
これまでの演出とは違うところがいっぱいあると聞いていて、
とても楽しみにしていました。

今回の大きな特徴は、現代に生きる子孫が
Anatevkaを訪ね先祖に思いを馳せる、
という設定にしているところですかね。
Dannyさんが最初出てくるんだけど、
赤いジャンパーを着ていて、当時のユダヤ人の格好をしていません。
舞台にはAnatevkaというサインが掛かっているだけで、
Tevyeになるための帽子が椅子にかかっている以外は何もなし。

祖先の話の書かれた本を読みながら舞台に登場し、
その本を椅子に置いてジャンパーを脱ぎ、
帽子をかぶってセリフに合わせてprayer shawlを引き出し
Tevyeに変身すると、Traditionが始まります。

すると舞台いっぱいにPapa, Mama, Sons, Daughtersが現れます。
Broadway Theaterに来るのはDoctor Zivago以来だったけど、
この舞台空間の広さをまったく生かしきれていなかったDZとは対照的に、
今回の作品は確かに人の数も多かったけど、
舞台の奥をうまく使っていたように思いました。
J列でも舞台の奥の方がやや見づらいぐらい舞台が高いので、
イマイチよく見えなかったんだけど、
舞台の奥は下に向かう階段になっていて、
そこから人が現れたりはけたりしてました。
あれうまいと思ったなぁ。
というのも、客席に向かって俳優たちが横一列になって
いっぺんに舞台に現れるので、
俳優の人数が多いことのインパクトをより出せていた気がします。
どーんと10人ぐらいまとまって出てくると迫力ある。

またChavaがロシア人と結婚したいと言った時に
こっち側とあっち側をカーテンで区切って、
Chavaがそのカーテンを取り除こうとするものの、
Tevyeにそのカーテンを戻されるのもわかりやすかったし、
ロシア人巡査部長に3日以内にここを出て行くように
と言われた小屋のセットが出てくる時、
舞台があんなに広いのに、
小屋の壁をだいぶ舞台手前に置いたんですよね。
その窮屈さが、彼らの肩身の狭さを端的に表していたと思います。

それにしてもDannyさんが良かったー。
これまで助演枠でしか見たことがなかったので、
バリトンであんなに歌う人だと知りませんでした。
ウィットに富んだセリフのときは
洗練されたコミカルさがあってとっても素敵でした。
決して大げさに演じたり歌ったりしないので、
ちょっと地味に見えるかもしれないけど、
どこにでもいるような「普通」な感じが、
Tevyeたった一人の話じゃなくて、
東欧のユダヤ人全体を表していたように思います。

そして父として、娘思いのとても温かいTevyeでした。
娘じゃなくて息子だったら
頑固で頭が硬いままだったのかな、と思うぐらい、
娘に甘いなーと思わせるところがあったけれど、
娘の意見を尊重して、loveという新しいスタイルを受け入れるところが、
伝統と規律、そして世界の波の間で揺れ動くだけじゃなく、
家族を大切に思う優しさもTevyeの態度を動かす
大きな要因になっていたのがなんかいいなーと思いました。
(娘を思うところはセリフ(歌詞)にもたくさん散りばめられているけど、
それがすごくよく伝わってきた、という意味で)

作品の最後は、バイオリン弾きを自分の後ろではなく、
前に立たせる演出で終わるいうことも教えていただいていたのですが、
伝統の象徴を自分の前に立たせるところに、
伝統やidentityに対する誇りを感じた気がしました。

以前、ユダヤ人がどうBway業界で活躍してきたか、
というドキュメンタリー番組を見たことがあって、
その中でFiddlerがウケた理由は
ただユダヤ人迫害の悲しい歴史を描いただけでなく、
作品のテーマの根本が「Tradition」という普遍のテーマだから、
ユダヤ人だけでなく、様々なバックグラウンドを持った人たち
(先祖の国の文化と、アメリカの文化を融合している人たち)が住む
ニューヨークで受け入れられ、
さらには日本などでも成功したんだ、という解説があったんだけど、
今回の演出は「伝統」をさらに越えて、
祖先に対する「誇り」がテーマかな、なんて思ってみていました。
というのも、最後、Dannyさんが一旦Tevyeから離れて、
赤いジャンパーを着て出てきて、本を抱きしめて涙ぐむのですが、
その様子が祖先に対する尊敬や
自分がその子孫であることの誇りを表しているのかなと思ったんですよね。

なので、最後が前向きに終わるので、
この作品ってセンスのいいセリフは多いけど、
話としては暗いから、重ーい気持ちで劇場を出る、
という印象だったのが、180度変わった気がします。
いやー、素晴らしかった。
インターミッション込みでほぼ3時間で長かったけどね。

俳優で言えば、Motel役のアダム・カンターを楽しみにしていたのですが、
えーっと、音さっぱり合ってないし、声もスカスカでした。
彼ってあんなんだったっけ。風邪かな。
娘たちの中では3番目のChavaを演じていた
Melanie Mooreがとてもかわいらしかったです。
ダンスがとにかくキレイ。
指の先まで神経が行き届いていて美しかったです。

これも見て良かったーと思う作品でした。
今年のリバイバル、どれも完成度高いなっ!!


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