2022年観劇9本目:Paradise Square

4/21/2022 Thu 7pm
Paradise Square
Barrymore Theatre
Orch M109 $32 + Fee$4 (Lottery)

初エントリーでロトが当たりました。
しかも席はセンターブロックど真ん中。

約10年の制作過程(地方でのトライアウトを含む)を経てBroadway入りした作品です。
Lower ManhattanのFive Pointsと呼ばれる一帯が舞台。
飢餓から逃れるために移民してきたアイリッシュと、
黒人(一部は奴隷を逃れてきた人々)が暮らしていた場所にあるバーを舞台に、
1863年に起こったNY Draft Riotsの事件を扱っています。

この事件はリンカーンがアナウンスしたドラフト制度が背景にあったそう。
ミュージカルの中でも語られますが、
ドラフトで選ばれた男子は北軍に加わらないといけない、
軍隊には移民も含まれるが、黒人はドラフトの対象ではない、
(黒人解放のための戦争なのに自分達のフリーダムのために戦争に行けないと黒人は怒る)
もし選ばれてた場合、$300を支払えば免除される、
(アイリッシュなどの貧困層の移民には到底払える額ではなく、
アイリッシュは戦争に行くために移民してきたのではないと怒る)
などの条件があり、人種間の軋轢を助長するような内容でした。

一見バーではアイリッシュと黒人が仲良くやっているように見えますが、
アイリッシュは単純労働を黒人に取られ仕事がなく不満。
一方で貧困層の移民と黒人が手を組まれては困ると、
その不和を自分達に有利なように使いたい裕福層白人がいる。
とにかく複雑な人種関係が横たわっています。

こういった背景、さらには事件そのものをきちんと説明しないといけないと思ったのか、
作品があれもこれも詰めすぎた内容になっていて、なんかまとまってなかった。
ミュージカルというより、歴史の授業を受けているみたい。
なんかそれがAlligianceっぽかった。

まとまっていなかった理由の一つは出てくるキャラクターが多すぎたこと。
バーを経営する北部(NY)の黒人女性、プランテーションから逃げてきた南部の黒人カップル、
またそういった逃れてきた黒人を助ける黒人、
すでにアメリカで生活しているアイリッシュ移民、その中には戦争に行くものも。
また新たに移民してきたアイリッシュ、Upper Sideの裕福な白人、
全部出してそれぞれにストーリーを設けたので、
2時間半のミュージカルフォーマットだと説明しきれずに時間が足りない。
かつキャラクターもあまり掘り下げた感じがなく感情移入しづらい。
サングスルーとまではいかないけど、それぞれに曲を与えたから歌の部分が多すぎて、
もっとバッサリと曲と切って、セリフで進めてもいいんじゃないかと思いました。
とにかく色々詰め込んだので、
観客側に感じたり、考えたりする隙間が全然用意されておらず、
見終わった後、なんかお腹いっぱい、というか、疲れた、という印象だけが残りました。

そして致命的だと思ったのが、最後に主役に
(2022年の今でも)人種関係なく人々が混じり合って生活する世の中はまだ実現されていない、
といった内容のセリフを言わせたこと。
このセリフのせいで、この作品がエンタメじゃなくて100%レクチャーになってしまった。
興醒め。
そこはセリフにしないで、観客が結局今もまだそういう社会になってないよね、
と考えさせる余白が欲しかった。

あと軋轢が表面化する前にバーでアイリッシュ系音楽&ダンスと
黒人の音楽&ダンスが混ざる場面が多々出てくるんだけど、
正直もうちょっと融合したものが見られるのかと思った。
わざと「融合」していないことを表現したのかもしれないけど、
なんかWSSを彷彿とさせる「対比」に見えるシーンが続いていました。

それとダンスが難しいのかな。
なんか、わー、ダンスがすごいーと思うシーンがあんまりいなかったんですよね。
どちらかというと、踊り切れていない印象でした。
そのせいで一番最初のダンスシーンでぐっと入り込めず、
結局最後までそれが引きづられてしまった。
加えて、アイルランドから最近移民してきたOwenは、
一応ダンスに自信がある役という設定だったけど、ぜーんぜんダンスが良くなくて。
Owenはバーで行われるダンスコンペティションに参加して賞金の$300をゲットして、
もしドラフトされても、その$300で兵役を回避したいという目標があるんだけど、
いや、そのダンスレベルだったら120%ムリだよねと思わせるダンスなんですよね。
役の設定がチグハグに見えてしまった。

よかったところは…
主演のJoaquina Kalukangoの歌がうまかったこと。
彼女が終盤に歌うLet It Burnはスタオベになりました。
あとJBに出ていたMatt Bogardが見られたこと。
そこまで目立つ役ではありませんが、彼も歌がうまかった。

そのぐらいかなぁ。
あんまり長続きしそうな感じはしないです。

 


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