2016年観劇15本目:Bright Star

5月15日(日) 3pm
Bright Star
Cort Theatre
Balcony C7
$39(+手数料$6) goldstar利用

本来ならば合計$45なのですが、ギフトポイントがあって
実際に払ったのは$13.5でした。
劇場の入口に$30でRush出してるよ、って
わざわざご丁寧に張り紙をしていたので、
Rushは相当簡単に手に入りそうですが、
ちょいと今タイトスケジュールなのでgoldstarを利用しました。

2014年のサンディエゴ、
2015年のD.C公演を経て今年の春Bway入りした作品。
メインビジュアルで見る、主演女優がなーんかいまいち
意地悪そうな顔に見えていまいち興味が持てなかったのと、
批評もそう良いわけではなかったので、
トニーに絡みそうになければ見なくていいかな、
と思っていたのですが、必ず賞レースのBest Musicalに
ノミネートされているし、お師匠様からお話を聞いているうちに
これは見なくてはと思ったので、見に行ってきました。



ストーリーライン以外は全て素晴らしかった!!

お師匠様から教えていただいたところによると、
Steve MartinとEdie Brickell共作の
"Love Has Come For You"というアルバムの制作過程で
お互いがミュージカル好きという事が判明し、
だったらこのアルバムを使ってミュージカルを作ろうよ、
というところからこの作品が始まったそうです。
なのでストーリーが元というより、
曲ありきでスタートしたからなのかストーリーが弱い。
(結局はアルバムから残っている曲はほんの少しだけで、
このミュージカルのためにほとんど新たに書き下ろしたそうですが)
二つの時代を行ったり来たりするので、
あー、誰かが時代をつなぐキーパーソンなのねっていうのが
すぐ見えちゃうし、
Act1の終わりの方でその結末も簡単に予想できてしまいました。

そして終盤でこの作品の肝が解き明かされるところも
工夫が足りないというか、
おい、お前!! 今なぜそこでいう!! みたいな
相手に対する配慮に欠ける展開でして。
そのあとの歌のシーンで、何一人で盛り上がってんだよ、
人ひとり傷つけてんのにハレルヤって…あんた…と
なんかすっごいネガティブな気持ちで見てしまいました。
なのに、最後はその相手もあっさり許してえー、みたいな。

でも!!
この作品はそのストーリーラインの弱さを
85%ぐらい無視できるだけの素晴らしい
演出と振付とセットと照明と音楽でした。

大掛かりな装置を使うと自動でセットが動くから、
妙に間延びしてしまう事が多いけど、
この作品はほとんどのセットが人力で動かされます。
アンサンブルたちがそれを動かすんだけど、
テキパキと動かすので、シーンシーンの入れ替えに無駄がない。
しかもただ動かすだけじゃなく、動かし方が振付的というか、
アンサンブルが独特の動きを加えるので、
シーンAとシーンBの入れ替えのはずなのに、
客のアテンションをずーっと引きつけたままだから、
集中が途切れることなく、とにかくテンポよく場面が進んでいくのですよ。
In The Heightsを初めて見たときの様な
あの寸分の隙間も埋めてくる感じを思い出しました。
ストーリーは1920年代と1940年代を行ったり来たりして、
割と場面転換が多いんだけど、さっぱり間延びしないし、
緻密に計算されたセットとアンサンブルの動きにとにかく圧倒されました。

例えばSignatureでDinerをみたときに、
ダイナーのセットの上げ下げに時間がかかっていて、
あー、また場面転換すんの?
もうちょっとテキパキ進まないかなーと思ったことがあったんだけど、
今回はその逆。次はどう場面転換されるんだろうと
ちょっとワクワクするぐらいでした。

そしてオケのいる小屋が舞台上にあるのですが、
音楽がメインになるシーンでは舞台の真ん中に、
そうではないときは舞台の端に動かされていて、
Waitressみたいにずーっと同じ場所にいるのとは違いました。
(ってまだBway版では見ていないんだけど)
オケが舞台上にいることは珍しいことではないけど、
ストーリーに組み込まれて
ポジショニングが変わるのは珍しいよな、と思ったり。

そしてアンサンブルの使い方がとにかく秀逸でした。
セットを動かすのもアンサンブルだけど、
通常の役割である村人、バーの客など、
「人」として動くところもあれば、
現実では存在しない、象徴的な動きを担うものとしてして
シーンをサポートすることもあるなど、
スターキャッチャーのアンサンブルを思い出したりしました。

「ダンス」ではない動きを「振付」と
分類するのかどうかはわからないけど、
人をどう配置し、意味を持たせるという点では
今期の中ではずば抜けていると思います。
でもこれってトニーの振付部門には入ってないのね。
振付はやっぱり踊りメインで判断されるってことかしらね。
でも、このアンサンブルの動かし方はすごすぎた。
バルコニーから見ていたので舞台上の動きを俯瞰で見られたのですが、
さすがにバルコニーはちょいと遠いけど、
この空間を上手に使っているところを見るには
少し後ろから見ることをお勧めしたいです。

振付はIt Shouda Been Youと同じ人。
ISBYもダンスはほとんどなかったけど、
人がキレイに舞台上を交差してましたよね。
空間把握力のすごく長けた人なんだろうなぁ。

音楽もブルーグラスなので劇場ではあまり聞かないタイプだけど、
とても耳障りがいいし、ソロで歌える人が揃っているし、
ハーモニーになったときの厚みもあるし、
足踏みしたくなるような楽しさもあるし、でした。
そういえば久しぶりに1対1で違うメロディーを歌う曲を聞いた気がする。
グループ間で違うメロディーを歌うことはあるけど、
最近1対1でお互いが主張しあう、
でも調和してるっていう曲ってあんまり聞いていない様な…。
あとRepriseの使い方が効果的でした。
一度で耳に残る、意味が一発でわかりやすい
メロディーラインをrepriseとして使っていたので、
気づきやすかったです。
あ、あとダンスも一ヶ所repriseしていたのですが、
そこも印象的な動きがあるところを使っていたので、
そのつながりが分かりやすいかったです。

他にも時代を行き来することを最初に説明するシーンの
40年代から20年代への変身方法が効果的だったり、
背景の白い幕の使い方がユニークだったり、
いいところを挙げるとキリがありません。

だからこそ余計ストーリーの弱さが気になったというか。
セリフひとつひとつにはクスっと笑えるところがあったりするんだけど、
ストーリーを全体的に見ると、むーーーー…っていう感じかな。
作品の肝はいくらミュージカルでも
伝えたいこと、ストーリーだと思うから、
そこが抜け落ちているところがやっぱり致命的。
となると、映画からのアダプテーションだけど、
School of Rockの方がよりドラマになってるし
総合的には満足度が高かったかなぁ。

俳優でいうと、最初にも書いた通り、
主演のCarmen Cusackに勝手にいまいちな印象を持っていたんだけど、
この人は歌だけでなく演技もとても素敵でした。
トニー最有力のCynthia Erivoが歌8割演技2割だとしたら、
彼女は5:5だと思います。
でもインパクトという意味では完全に前者よね。

ただ、若い頃のポートレイトはいまいちだったかなー。
賢い役なのに、無垢な感じを出そうとして、
でもそれが役のキャラじゃないし、本人もそれができないから、
笑い方とかキャキャって騒ぐ様子に違和感があって、
客席からちょっと失笑が漏れていたりしました…。
若い=無垢ってわけじゃないと思うんだけどね。

相手役のJimmyには最近だとDLLやドクトルジバゴの
Paul Nolan。この人はカメレオン俳優ですね。
ぜーんぜん役どころが違うのに、どれも違和感がない。
ただ再会のシーンがだいぶ老けすぎな描写で、
え、そんなに時間経ったんだっけとも思ったけど、
(なのに最後のシーンでは急に若返っていたし…笑)
歌も上手だし、えーっと、
彼はトニーにノミネートされるべきだったんじゃないかな。

他にも20年代を生きるMargoや
40年代を生きるLucy役の女優さんたちも個性があってよかったです。

だからやーっぱりこのストーリーの弱さがな…。
でも逆に言うとストーリーが弱くても、
演出でここまで化けるのか、といった方がいいのかな。
演出もトニーにはノミネートされていないんだけど、
最後の一枠何見ようかなって悩んだら
ぜひこの作品をお勧めしたいです。
ただよかったと思う演出や振付ではノミネートされておらず、
Book(これは絶対ない)、オーケストレーション、スコア、
Best Musical、主演女優のみのノミネートなんですよね。
今の客入りもそういいわけじゃないし、
トニー効果もあまり期待できないし、ロングランは厳しいかな…。


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