2023年観劇10本目: Love Letter

06/07/2023 Wed 7pm
Love Letter
Irish Rep Theatre
M2 $50+fee $2.50

Irish RepのThe Letter Seriesの一つであるLove Letter。
Matther BroderickとLaura Benantiの二人舞台です。

セットはライティングデスクと椅子の二つ。
二人が一緒に出てきて、マシューがローラの椅子を引いてまずローラを座り、
そしてマシューが隣に座ります。そこだけが唯一二人が物理的に交わるところ。
ショーの間、二人はずっと客席を見ていてお互いを見ません。
セリフが書かれた大きなバインダーを開いて、お互いに送り合った手紙を読み上げます。

小学2年生のときに、AndyがMellisaのバースディパーティーにお呼ばれして、
Mellisaのお母さんから招待のお手紙をもらい、そのお礼を書くのが始まり。
そこからの二人の手紙のやり取りを通じて、
小学校から中学、高校、大学、仕事、結婚、家族、死までを見ていきます。

ただ手紙を読み上げるだけなので、最初はこれがずっと続くの?と思ったのですが、
そんな思いはすぐに消えて、二人の手紙の朗読に没頭していきます。

セットがあったり、全身を使った演技と違って、
手紙を読み上げるだけなので、次に何がくるかの予想がつかない。
朗読の言葉が発されたと同時に驚いたり、安堵したり、を繰り返していきます。
この構成、シンプルだけど、すごく練られていた。

とにかく想像、イメージすることを強いられる構成でして。
強いられるというと言葉が悪いけど…。
舞台は、観客の想像力を使うことで完成するとはよく言われるけど、
こんなに想像力を使わされた舞台は初めてで、それがすごくクリエイティブだった。

手紙の内容で前の手紙から今の手紙までどの程度月日が経ったのか明かされたり、
また、手紙と手紙の間に、二人がIn-Personで会う時間があったことはわかるのですが、
そのIn-Personでの出来事は演技としては行われず、
観客は二人が会ったときに何があったのかも手紙で知ることになります。
その空いた時間、二人が会った時間に起きた出来事を、
観客各自が次の手紙を聞くことで、想像して埋めていくという作業と、
同時にAndy何言ってるんだよ、Melissaなんてことしてるんだよ、と思う自分の感情も重なって、
ただ手紙を朗読しているだけなのに、奥行きのある作品になるんですよね。

二人の関係性もちょっと特殊で、
手紙の中でだけ二人は自分の感情をストレートに表現することが多いのですが、
多分、In-Personではそういう表現ができなかったのでしょう。
または手紙で築き上げた関係性をそのままIn-Personに持っていくることができなかった。
手紙で関係が深化しても、In-Personで関係を作るのはまた別のもの。
お互いが好きなのは手紙を通じてわかるけど、
二人が結局付き合ったり、結婚したりということはなく、別々の人生を歩んでいきます。
手紙もそのときによって二人の距離がマチマチで、
すごくパーソナルのことを書いたり、そっけなかったり。
でもこの設定がすごくリアリティがあったし、人間くさかった。

そして人から期待される役割と、本当の自分と、
どっちを選ぶか、という点にも触れていて、
手紙のやりとり、というなかにいろんな人生が詰め込まれていました。

あとはもう演じる二人のうまさ。
ずっと座りっぱなしだし、二人が視線を合わせることはないし、
ただ正面を向いて手紙を読むだけなのに、ちょっとした表情や声のトーンで、
二人の人生が細かくイメージできるんですよね。
狭い劇場でたった1週間弱の公演だったけど、見に行ってよかったです。

記録としてレビューを二つ貼っておきます。
小さい公演だったので大手は書いていないんだけど、この二つの批評(ブログ)がよかったです。
Carore di Tosti
New York Stage Review


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