2021年観劇4本目 : Caroline, or Change

11/14/2021 Sun 3pm
Caroline, or Change
Studio 54
Mezz JJ 107 Hiptix $30

Roundaboutの作品なので、Hiptixを2019年には買っていたのですが、
コロナで延期になり、今年の8月頃に改めてチケットを取りました。

Caroline, or Changeは2004年の初演時には見ていないんだけど、
2004年の作品を追ったドキュメンタリー、
Show Business The Road to Broadwayでフューチャーされている
作品の一つだったので、気になっていました。

2004年の初演時は4ヶ月程度でクローズしてしまいましたが、
2017年にイギリス(最終的にはWE)でリバイバルが上演され、
今回はそれをBroadwayに持ってきた、という形。
その時の主演で、オリビエ賞も受賞したSharon D. ClarkeがBwayでも主演です。

作品の舞台は1963年のルイジアナ。
ユダヤ人家族とそこでメイドとして働くCarolineと、彼女の家族の話。
1963年はJFKが暗殺されたり、
Martin Luther King Jr.がI have a dreamのスピーチをおこなった年でもあり、
Changeにはアメリカの変化に加えて、家族の変化、
そして小銭としてのChangeの意味があります。

この作品を見た後に、Show Businessを見直したのですが、
批評家たちがやいやい作品について語るところで、
この作品は商業的には成功しないだろう、と話しているシーンがありました。
Avenue Qがトニー賞を取る年で、Wickedがあり、
こういうテーマの作品は、敬遠されたのかもしれません。
でも、2020年にコロナで延期となり、2021年に再演のタイミングが回ってきたのは、
何か意味があるような気がします。

この作品は先に書いたようにChangeがテーマだけど、
ストーリーの中に白人(ユダヤ人)と黒人の対比だけでなく、
他にもさまざまな対比があって興味深かったです。

対比1 – 黒人の世代間による差
Carolineはメイドという立場に満足しているわけではなく、
メイドの仕事のせいで、怒りっぽくもなっている。
友達のDottyはメイド先の計らいもあり、
大学で学ぶ準備をしており、大学生に流行りの服装を身につけている。
そんなDottyのことをCarolineは気に食わない。
Carolineは白人には楯突かず、メイドらしい服を着て、
波を立てないことが一番。
一方で娘のEmmieはConfederate soldier statueを倒すのに関わったり、
黒人のより良い将来のために活動したいと思っている。

対比2 – JFK評
人種間の対比でもあるけど、JFKが暗殺されたときに、
JFKはユダヤ人の老夫婦はJFKはロシアに打ち勝ち、反ユダヤを終わらせ、
有色人種やユダヤ人の友だとヒーローとして扱うのに対し、
Emmieは黒人票を勝ちとったくせに、わたしたちを無視した、という。

対比3 – ユダヤ人の黒人への対応
ユダヤ人家族の息子Noahは、Carolineが大して優しい態度で接さないのに、
Carolineに一種の尊敬を持っていて、
彼女がアメリカの大統領だとか、父親よりも強いと言うのに対して、
父親はそういえばCarolineと1対1で話すシーンがなかった。
彼にとってCarolineはただのメイドで、大した存在ではない。
継母はNY出身ということもあり、メイドに対して申し訳ない気持ちがあり、
給料を上げてあげられない分、
料理を持って帰らせようとしたり、Noahがポケットから出し忘れた
小銭を給料の足しにできるようにする。そしてよくCarolineと話す。
父親と息子の違いは世代差を表しているのかな。
父親と継母では次に書く地域差が出ていた。

対比4 – 南部と北部
継母のCarolineへの対応でもわかるけど、
南部(ルイジアナ)と北部(NY)では黒人への対応や考え方が違う。
なんでUWSが好きなRoseがルイジアナの田舎の人と結婚するのか、
ちょっと設定に無理があるのでは、とも思ったけど、
対比を出すために設定が必要だったのかな。

Roseの父親はLeftyで、政治の話をしたがる。
30年代に予期していたように、
これから黒人を取り巻く世界は変わるぞ、と言うのに対し、
ユダヤ人の祖父母は、公民権運動は「怖い」という感覚。
でもルイジアナの運動はアラバマやミシシッピほどじゃない、
と言うし、そもそも公民権運動には興味がなさそう。
(政治の話はしたくない)

対比5 – 子どもへの対応
パーソナリティーの部分も大きいと思うけど、
父親は妻を亡くしたあと気力を失っており、
Roseと新しい家庭を築いていくことに全く興味がない。
そしてNoahのこともほとんど気にかけていない。
ひたすらクラリネットを吹くだけ。
白人の若い男性が最も使いものにならない。
一方で継母のRosaはNoahとの関係構築に苦心するが、
多少の愚痴は言うものの、努力をしている。

それにしても、2004年に上演された内容が、
2021年になっても全く古いと感じないところが、
人種問題の解決の難しさを表していますね。
でも去年のいろいろな運動があったからこそ、
この作品がより問題提起でもあるし、皮肉にもなっているなと思いました。

キャストは、とにかく主演のSharon D. Clarkeにつきます。
4年間この役をやっていますが、もう役に憑依していると言う感じ。
そして何より歌と演技が素晴らしい。
この日、特に思ったのはうまい人は滑舌もいいですね。
歌詞が聞き取りやすい。
低い声でボソボソっと歌う時も、歌い上げる時も、
歌詞の聞き取りやすさが変わりません。

あとこの日、ちょっと意外だったのが
Caissie Levyがこういうコメディーな役があっていて、
全体的にシリアスな作品の中で、唯一のコメディ枠でしたが、
メリハリがあって良かった。
Frozenは作品があれだから置いておくとして、
レミゼみたいなシリアスな役より、
こういうコメディーの方が合う人なのかな。
とってもいい味出していました。

作品としては1月上旬までの限定公演。
キャストアルバムは出るようなので、それを聞いてみたいなと思います。

 


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