2015年観劇40本目:Thérèse Raquin

10月3日(土)ソワレ
Thérèse Raquin
Studio 54
$10 Mezz JJ211

Roundaboutの他の作品のAccess10を買う時に、
この秋に始まるRoundaboutのPlayのチケットも
特別価格($10)で出していることがわかり、
Ugly BettyのJudith Lightさんや
マチルダパパのガブリエルさんが出ているし、
キーラ・ナイトレイが$10で見られるなら、と
この作品も買ったので見てきました。

公演初日に変態がキーラ・ナイトレイに
プロポーズの言葉を叫びながら花束を投げたとかで
ちょっと話題になりましたよね。
さすがにこの日、そういうことをする人はいませんでしたが、
いやーーーー、マナーの悪い客の多いこと。
始まる前に携帯を消せとか、アナウンスがないのですよ。
だからなのか、上演中にスマホをいじっている人を
何度も見ました。そしてAct2は今度はお菓子のパッケージの
カサカサした音が止まない。
あと、飲み物のカップが転げ落ちていく音も、
大袈裟ではなく10回ぐらい聞いた気がします。
今年一番の客のマナーの悪さでした。

エミーズ・ゾラの同名の小説が元ということだったので、
小説のあらすじとこの作品の解説をいくつか読んでいったのですが、
この作品って、設定はそう珍しいわけじゃないから、
ストーリー展開にハラハラするというより、
テリーズのエゴが自分自身を苦しめるいくところの心情描写を、
どう舞台で描くのかと楽しみにしていたのですが。

まさかのコメディーだった!!

というのも、亡霊となって現れるカミールのシーンが
すべてコントにしか見えない、ひどい演出だったんですよね。
ローレンと結託してカミールを殺したあと、
カミールが亡霊となって現れるシーンがAct2にたくさんあるんですよ。
例えば窓を叩く音がして窓を半分開けたら、
(1階じゃないのに)窓を叩くカミールの手が見えたり、
ベッドでテレーズとローレンがセックスを
始めようとしたらベッドからカミールの手が出てきたりするとか、
物理的にはありえない現象が立て続けに起こって、
この亡霊がテレーズを苦しめていく重要なポイントなのに、
まさかの、この演出がコントにしか見えないという…。

映像だったら恐ろしくてドキドキするんだと思うのです。
でも、生の舞台で、映像さながらのことwやろうとすると、
笑い以外のなにものでもありませんでした。
想像してください。舞台で、ローレンとテレーズが
ベッドで情事を始めようとしたら、
生身の腕が急にでてくるんですよ!!
現実的にありえんでしょ。

亡霊として出てくる部分を、ガブリエルさんが演じて
カミール自身が手や音だけでなく、
全身として出てくるところも2ヶ所ぐらいあったんだけど、
その前の手や首の部分がコントに見えるので、
カミール本人が出てくるとコントの続きに見えて、客が笑っちゃうのですよね。

だから、エゴを押し通した結果、
亡霊を見るようになり、それに苛まされて、
精神のバランスが崩れ、互いに怒鳴り合い、
この状況に耐えられなくなり、
テレーズもローレンもお互いを殺そうとしていたことがわかり、
二人揃って自殺する、という最期を迎えるはずなのに、
カミール本人が舞台に出てちゃうというコントの部分のせいで、
この精神的に破綻していくところがさっぱり残らないのです。

そんなコントだから、テレーズとローレンが口論しているのを
聞いて、二人が大切な息子のカミールを殺したと知った母親が
倒れてしまうところも、倒れ方が派手だったこともあり、
またこれもコントに見えるという…。

Act1の最後でガブリエルさん演じるカミールが死んでしまって、
Act2で使わないのはもったいないと思ったのかもしれないけど、
生でやると亡霊の部分は相当陳腐だから、
これは照明とか音響でだけで作り上げた方が良かったかも。

あと小説だと、画家のローレンが描く絵が
死体置き場で見たカミールの水死体にどれも似てきてしまう、とか、
ローレンの子どもを妊娠したテレーズが
ローレンに殴られる時にお腹がぶたれるように仕向ける、とか、
精神バランスを崩して狂っていく様子が
細かく描かれているみたいなんだけど、
舞台だと時間の限界があるのか、
亡霊に怯えるところと怒鳴りあうところしかなくて、
正直あまり精神的におかしくなっていく感じがなかったのですよね。
だから最後もカミールを殺したみたいに、
相手も殺しちゃえばいいっか、みたいな。
ちょっと軽い感じがした。

あとキャスティングもちょっと…。
小説だとカミールは病弱、ローレンは逞しい、という対比だけど、
ガブリエルさんの方がローレン役のMatt Ryanより一回り大きいし、
さっぱり病弱に見えないし、
Matt Ryanは強靭で荒っぽい感じが少し足りず、
ボート上で掴みあったら、絶対ガブリエルさん勝つよね、
って感じでした。


(この身長差…)

私、席についてPlaybill見るまで、
この二人の役、反対だと思ってました。
あー、確認しておいて良かった。

キーラ・ナイトレイは背が高いから存在感はあるんだけど、
顔が小さいのか、メザニンからだと表情がさっぱり見えないのと、
ガブリエルさんやJudithさんの舞台っぽい大袈裟なセリフまわしや
表情や作り方や間の使い方と比べると、ちょっと印象に残りづらかった。
特にAct1はほぼセリフがなく、心ここに在らずと
ぼーっと座っていることが多いので、余計印象に残らなかったです。
なんかちょっともったいない気がする。

その中で一人抜群に光ってたのがJudith Lightさん。
カミールを溺愛している様子がかわいらしかった一方、
話せす動けずになったあとの無表情さがとても冷たく、
そして一番声が通っていて、さすがだなーと。

あとガブリエルさんは病弱でマザコン、
という役どころが合っていない気がしていたし、
声の出し方とかにわざと臭さを感じて
最初はあまり好きじゃなかったんだけど、
振り返ってみると、印象に残ってたのってガブリエルさんだな、と。
Act2の亡霊として現れてくるだけで、Act1しかセリフがないのだけど、
さーっぱり大人になりきれていないダメな感じや、
ときどきタイミングよくおもしろいセリフを言うところが
ちょっぴりチャーミングでした。
でもそれが逆に、
ローレンの方が断然いいじゃん!!感を薄めていたところもあったけど。

あとおもしろかったのはセットと照明。
セットは舞台の半分に水を入れて、川を作ってました。
Studio54って結構奥行きのある舞台なのね。
家の中のシーンは川を隠すようなセットが降りてきたり、
ローレンの天井の狭いアパートの部屋のシーンは
一番奥の壁の一部が開いてセットがでてくるんだけど、
宙に浮いている感じが、地についていない不安定さを出してて、
これも上手だなーと。
照明も郊外に住んでいる時は陽の暖かさを感じる照明が
とても素敵でした。

反対に音響がイマイチだった。
最初の方のシーンでテレーズとローレンが川に出かけて、
そこで白鳥(?)か何かが飛び立つシーンの音があるんだけど、
(ここ、白鳥だったか他の鳥だったか思い出せません。
原作にこのシーンがあるのかと思って、
onlineでちらっと読んでみたけど、探しきれなかった)
これが本来の音なのかもしれないけど、
バタバタバタという羽の音が全然キレイじゃないんですよね。
セリフで「あ、白鳥(多分)」というまで
さっぱり音の意味がわからなかった。
それに、この音がパリのシーンで車が止まる音と似てて、
うん? なんでここで白鳥が飛び立つんだ??と一瞬「?」になりました。
あと、この羽の音が2回の結婚式のどちらも使われるんだけど、
テレーズが求めている自由が遠くに行ってしまう、
という象徴なのかもしれないけど、いかんせんエンジン音だし、
結婚式が照明がほとんどない暗い中で行われていて、
この照明のせいで結婚が全く嬉しくないことがわかるから、
よくわからない音はいらなかった気がするな。

あとテレーズとローレンのセックスシーンが、
お互い激しく求め、性欲に溺れるはずなんだけど、
どっちも衣装をさっぱり脱がないのですよね。
ローレンがジャケットを脱ぐぐらいかな。
だから、気づかれないうちにパパっと終えよう、
としている感じに見えちゃうし、
でも声だけはしっかり出すから、ちょっとアンバランス。
少しぐらいはだけた方がいい気がするな。

その他では、まだ4回目の公演だったからかもしれませんが、
セリフを言い終わってセットチェンジに入るための暗転が
遅くて変な間があったり、セットチェンジがなんか遅かったり、
暗転しているとはいえちょっと薄暗い中を
壁がある設定の場所(物理的に壁はないけど)を役者が行き来してるのが見えて
いやいやそこ壁でしょ、と思ってしまったり、
ストーリー以外の部分で、
なんだか全体的にチグハグな印象を受けました。
多少遅れて始まったけど、終わったのは10時40分過ぎで、
ちょっと間延び感の否めないところがあったから、
右隣の夫婦は二人で合計で100回ぐらいあくびしてたし、
左隣の男性も3回ぐらい寝落ちてました。
これからブラッシュアップしていくのだと思いますが、
私はこれもう一度見たいとは思えないかなー。


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