2015年観劇16本目:The Heidi Chronicles

5月1日(金)
The Heidi Chronicles
Music Box
AA104 $37(Rush)

もともとは夏ぐらいまで上演が予定されていたこの作品ですが、
客入りがイマイチで、5/3でのクローズが決まり、
駆け込みで見てきました。
クローズが発表されたからか、私が見た日はほぼ客席は埋まってました。



Wendy Wassersteinの
トニー&ピューリッチャー賞に輝いたこの作品ですが、
Bryce Pinkhamが出ると知るまでは内容どころかタイトルさえも知らず、
キャスティングのニュースがあってからググってみたら、
一人の女性Heidi(Art Historian)を通して、
60年代から80年代の女性の役割の変化を見る、
フェミニズムについての作品だということで、
とても興味深いと思って観に行こうと思ってました。
母がちょうどこの主人公と同年代で、
70年代にアメリカで過ごした経験があるため、
私が小さいときにアメリカでこういう運動があってね、
と話してくれたことがあって、
母が触れた世界を見られるというのも楽しみの一つでした。

作品は80年代にHeidiが過去の素晴らしい女性画家の
講義をするところから始まり、
60年代、70年代、80年代と振り返っていきます。

高校時代からの友人Susanを演じているのが
アジア系の女性だったのですが、
彼女が終始いい味を出しておりまして。
結構頭の軽いキャラクターなのかと思いきや、
LAでこちらも男社会のテレビ業界で成功していて、
しかもそれをとっても楽しんでいる様子で、
Heidiの葛藤している様子とは対照的に描かれているのが印象的でした。

エリザベス・モスがMadmenで演じている
ペギーも超男性社会な広告業界で
女性のキャリアを切り開いていく役どころなので、
このHeidiの役も、似合っていたように思います。
ペギーの方がもっと押しが強い感じがあるけど、
Heidiは自分の中で色々と葛藤しつつ、
あまり自分からは主張したくないけど、
誰かに聞かれるとすらすらと意見が出てくる人なんだ、という印象でした。

ただ、“Women―Where Are We Going?”という内容で
スピーチを行うシーンがあるんだけど、
スピーチ原稿を用意しないままスピーチに臨み、
途中でメルトダウンするんですよね。
メルトダウンしたあとは心の底から出てくる言葉が続くので、
それはそれで力強いスピートなんだけど、
結局この時代の流行についておしゃべりしてたり、
家庭に入って母親業をしている「普通」の女性が羨ましいのか、
でも自分が選んだ道に自信を持っているのか、
それともそんな選択をpityだと言われたくないのか、
どう受け止めていいのかわからない感じで。

もちろん80年代と今では女性がキャリアを積むという世界において
土台が大きく違うし、今と違ってロールモデルもないから、
答えが出せずにstruggleなのは理解できるんだけど、
私はこのスピーチのシーンで、それまでぐっと入り込んでいたのが、
逆に違和感とか、なんでこのスピーチになったのか、
原稿を用意せずに臨んだのは何故なのか、
メルトダウンした理由は?!…などなど
全体的にイマイチぴんと来なくて、
ここで少し作品との距離を感じてしまいました。

で、最後は結婚はせずに、子どもを養子に迎えて、
インナーバランスを保つ、という結末を迎えるんだけど、
結局女性の幸せは子どもなのか?!?!と思ってしまったりして、
まぁこれは80年代の人が考えるフェミニズムなんだな、
と一旦自分とは切り離して最後は見てました。

“All people deserve to fulfill their potential”と
いうセリフには大賛成だし、
もちろん今と通じるところもあるし、
こう葛藤してきた人がいるから、今があるんだよな、って思った…
けど、今は仕事も家庭もこなす女性もいるし、
(かなりずるいけど)真正面から男性と張り合わなくても、
女性という立場をうまく利用しつつ、
ポジションを上げていく方法もあるわけだし、
あと、この作品に出てくるScoopみたいに、
個人としては尊敬するけど、結婚相手にHeidiは選べない、
という人とは反対で、
女性がキャリアを積むことに賛成してくれる
旦那を持つ友人が周りにいたりするから、
やっぱりところどころ「古いなー」という印象は拭えませんでした。

でもそんな中で圧倒的に光ってたのはピンクハム!!
Heidiの親友でゲイのPeterを演じていたのですが、
ウィットに富んだセリフが多くていい役なのは差し引いても、
出てきてセリフを発さなくても、佇まいと表情だけで笑いを持って行ったり、
楽しい部分があると同時に、
Heidiにゲイであるとカムアウトしたり、
HeidiがMidwestに引っ越すと言いに来た時に、
自分が愛する人がどんどんいなくなることに腹を立てて、
怒りと涙とともにそれを訴えるPeterがもう熱演で。
彼の役が一番感情の波が激しいのですが、
その波が大きくなるたびに息が止まりました。
全体を通してチャーミングでありながら、
ドラマティックでもあり、
それでもって実は登場人物の中で一番もろくて優しいハートの持ち主で、
ピンクハムが出てくるたびに目と心が奪われました。
なんなら一番目立ってたし、全部持って行ってたよね。
なのでトニーのノミネーションの発表のあとにこの作品を見たのですが、
彼がトニーにノミネートされなかったのはちょっと意外です。

相変わらずスプラッシュと、
そして涙を流すシーンでは鼻水もとんでもないことになってたけど。

終演後、ピンクハムをSDで見てみたくて行ってしまいました。
あんななのに、なんかイケメンに見えてねー。
シアターマジックって恐ろしい(笑)
この作品での熱演が素晴らしかったので、
なんだかGGLAMにいつ戻るか、と聞くのは
失礼な気がして聞きませんでしたが、
でもなんならGGLAMを卒業して他の作品でもみてみたいなーと思いました。


Related Posts

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *